【「勝ち」「負け」と雨仕舞】X(ツイッター)を更新しました

軒天より破風が下がっているのが雨仕舞的に望ましい納まりです。

建築用語には「勝ち」「負け」という表現があります。これは複数の部材が取り合う(交差・接合する)際、どちらが外側に出るか、つまり見える側にくるかを表す言葉です。雨水の排出という観点からは、破風が軒天より外側に出ている「破風勝ち」の納まりのほうが、正しい設計といえます。

ところが、片流れ屋根の棟部直下の写真を確認すると、「軒勝ち」とまではいかないまでも、破風の下木口まで外壁吹付塗材(スタッコ)がかかっているの状態になっています。このような納まりでは、破風の表面を流下する雨水が軒を伝い、やがて外壁表面にまで到達してしまうことが容易に予想されます。加えて、破風と軒天の突き付け部分から雨水が浸入すると、雨水が排出されず、軒天材の内側を経て室内に流れ込んでしまいます。

片流れ棟部と妻面の取り合い出隅の写真を見ると、妻側は破風勝ちになっているのに、棟部は軒勝ちになっています。なぜ、同じ建物なのにわざわざ納まりを変えているのでしょう?その理由を多角的に想像しても、見た目のイメージで造作しているからという結論以外思いつきません。したがって、こういった納まりには雨仕舞の知見は入っていないといえるでしょう。

この状態でただ塗り替えを行えば、さらに雨水を滞留させ、塗らなかった場合に比べ、より建物の劣化を速めてしまいます。塗装工事は、直接的な作用としてはベネフィットよりリスクのほうが圧倒的に高いのです。

「塗らないより塗ったほうがよい」という考えは断固として否定します。