【外装リフォーム工事の闇】X(ツイッター)を更新しました

前回の記事の続きです。

こういった施工は30年以上前の物件では普通に行われていました(と聞いています)。しかも、このような施工でも雨漏りしたり木材が腐朽したりすることは、それほど多くありません。

その理由は、当時やそれ以前の木造建築物においては、軒を出すことが一般的だったからです。軒があれば窓に雨がかかる回数がぐっと少なくなります。木材は濡れ続けている状態がおよそ16週間以上継続すると腐朽することがわかっていますが、雨がかりの回数が減れば、それだけ腐朽する確率も下がります。

それが、近年の設計では、どんどん軒が短くなってゆき、それに伴って窓へ雨がかかる比率が増えました。当然、雨漏りや腐朽の発生率も高まります。そこで、「先張り防水シート」などの材料やそれらを用いた施工ガイドラインが確立されていったのです。

ですから、現在の新築工事において、先張り防水シートや成形防水部材などを用いない施工は、ほぼなくなったものと思われます。

ただ、問題なのはリフォームの分野です。本件での施主からのそもそもの依頼は“塗装工事”です。私は見積前調査において新築時におけるこの不具合を発見し、実際の施工においてさらなる問題点に気づくことができました。はたして、塗装見積にかかる調査や実際の塗装工事で、このような不具合を見つけることができる実務者がどれほど存在しているでしょうか?自らを持ち上げるつもりは毛頭ないのですが、おそらくほぼ皆無でしょう。でも、建物を持たせるためには、塗装するよりも不具合を導き出すほうが、はるかに重要なのです。

新築では、ゼロから作り上げてゆくため、マニュアルが作りやすいのですが、改修においては物件の数だけ不具合の種類があるわけで、都度実務者の創造性が求められます。単純に考えても改修工事のほうが一筋縄でいかないのです。加えて、新築であれば住宅の構造耐力上主要な部分や雨水の浸入を防止する部分の瑕疵)に関して10年間の保証責任(瑕疵担保責任)を負っています(住宅瑕疵担保履行法)し、施工者にはそれにかかる資力担保として保険加入か保証金供託のいずれかを行う義務がありますが、リフォーム工事にはありません。

したがって、リフォーム工事においては、対象建物の耐久性の向上や維持延命に関し、何らのエビデンスがない仕様でも提案できてしまうのです。率直に申し上げて、今の日本で行われている外装リフォーム(塗り替え工事を含む)のほとんどは、維持延命に供していないと、私は思っています。

実は、そんな意味のない工事が通用するのは、発注者側でその仕様を了としてしまうからです。業界のモラルやリテラシーは、消費者の影響を最も大きく受けます。したがって、こういった不毛な工事をなくすには、私が常々申し上げているように、消費者が大勢順応主義に陥ることなく、主体的かつ合理的にリフォーム工事に向き合うことなのです。

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