【「やらないよりやったほうがよい」は誤り】X(ツイッター)を更新しました

「この屋根材は塗ってもダメです。すぐにひび割れます。カバー工法にしたほうがいいですよ。」

築後20年経過した頃にそういった話を業者から持ち掛けられ、信用して施工させたところ、10年も経たずに雨漏りしたそうです。残念ながら、お金をかけて雨漏りさせてしまったと言えます。

かつてこのアカウントでご紹介しましたが、私が経験した中では、2寸5分勾配という、今ではガイドラインに抵触するような緩勾配に葺かれている化粧スレート瓦材で、築後50年目に初めて雨漏りしたという案件がありました。

…何も驚くことはありません。屋根材など、下葺きの防水シート(アスファルトルーフィングシート等)を保護するのが目的であり、すべての雨水を防ぐことなど、最初から想定されていないからです。化粧スレート瓦材がひび割れていようが層間はく離を起こしていようが、雨水浸入に対して影響を及ぼすものではないのです。

翻って、カバー工法は、下地が隠れたまま施工するため、腐朽していてもそのまま残ります。新規屋根材を葺く際、下地が腐っていて釘やビスが利かなかったとしても、そのタイミングで既存屋根材をはがす業者はほぼ皆無でしょう。利かないまま施工するのです。これは職人さんのモラルの問題ではありません。カバー工法を選択すれば、そうなることは必定です。

加えて、防水シートは、葺き替えのように平らな下地(野地合板)に張ってゆくのではなく、既存の屋根材の上に張り付けてゆきます。屋根材自体に凹凸があり、しかも重なっている箇所には段差もありますので、その上に張ってゆく防水シートはすき間だらけです。ですから、雨水がそのすき間に入りったら、かえって滞留してしまうことが十分に想起されます。

こんなにリスクの高いカバー工法を、“予防”と称して、まだ雨漏りしていない屋根に施してゆくのは、本当に施主の利益に供しているのでしょうか。施主にリスクまできちんと説明し、十分な理解を得てからにすべきです。

もし塗装に向かないほどひび割れや層間はく離を起こしている化粧スレート瓦であれば、カバー工法を行うのではなく、そもそも塗らなければよいのです

「やらないよりもやったほうがいい」という考え方こそ改めるべきです。