【雨仕舞と木材保護塗料の限界】X(ツイッター)を更新しました

森山高至さんの発信により、SNS界隈では隈研吾さん設計の建築物に関し再燃していますが、そこから法隆寺にまで派生して議論がなされているようです。
まとめサイト→https://togetter.com/li/2511003
法隆寺は、私も雨仕舞に優れた建築物として何度も挙げさせていただいています。それを前提として申し上げれば、放っておいても腐らないわけではありません。でも、極力雨がかりしない工夫がなされており、また、雨水が木材に留まらせないような形状になっているため、メンテナンス周期を長く保つことができるのです。
「昭和の大修理」は1985年に完了していますが、その前は17世紀末だということで、大きな改修は300年近くなされていなかったことになります。もちろん、その間も細かな修補がなされていますが、「テセウスの船」のごとくすべての部材を交換してはいません。よくよく考えてみれば、昭和の大修理からすでに40年を経過しています。昨年私は現物を拝見しましたが、特段の腐朽はみられませんでした。この事実は、少なく見積もっても雨仕舞の効果であるといえるのではないでしょうか。※もちろん、メンテナンスはしているのでしょうが。
また、保護塗料を塗る頻度を高めれば腐らないという意見もありましたが、これには異存があります。
こちらの記事を見ていただくとわかるのですが、腐朽しているのは主に木口や雨水が溜まる箇所です。腐朽菌が生息するのに好適な環境であるという点が共通しています。ですから、雨水が溜まる箇所の木口、例えば束石に触れている束の底面などはとても腐朽しやすい部位です。しかしながら、どうやっても塗れません。ですから、保護塗料の効果を疑っているのではなく、「最も腐朽しやすい箇所こそ塗装できない」という物理的な事実による見解なのです。
議論においては、白か黒か、○か×かの二元論に陥ると不毛です。さまざまな見地から相対的な結論を求めるべきです。