品質の高い塗装工事を見分けるただ一つの方法-3【「ただ一つの方法とは?】

原田芳一です。

前回の続きです。

前回の記事はこちら。

↓ ↓ ↓

手間を惜しまず、丁寧に。

前回の記事では、塗装業者が塗料の耐久性の差をアピールしたがる理由、そして、工事期間や延べ作業人員数を出したがらない理由について触れました。

結局、いずれの理由も業者都合であったことは、ご理解いただけたかと思います。

それでは、本題である、

「品質の高い工事」を事前に見分ける方法

について、お答えいたします。

と申しますか、賢明な皆さんであれば、もうとっくに答えにたどり着いていると思いますが。

ようするに、

「建物を包括的にとらえ」

「塗装工事を改修手段のひとつに過ぎないと認識して」

そして、

「手間を惜しまず、丁寧に施工する」

ことが大事になります。

そのことを数値化する指標として、最も近いのが、

「施工日数」

と、

「延べ作業人員」

なのです。

すなわち、品質の高い塗装工事を見分けるただ一つの方法とは、

「施工日数」の長さと「延べ作業人員」の数を比べる

ことです。

「人工(にんく)」という単位と概念

「延べ作業人員」について、業界では、「人工(にんく)」という単位を用います。

1人が1日作業した際の出来高であり、転じて、1人が1日働いた際の人件費の意味もあります。

用例としては、

「この現場は●●人工で完成させることができると思います。」

「1人工●万●千円で手伝ってくれないか?」

などといった感じです。

この「人工」が、前回開けた「パンドラの箱」の中身だったのです!

職人どうしの会話で、

「俺なら戸建て1棟を●人工で仕上げることができる!」

などと自慢している者がいたりします。

それが、塗装職人のモチベーションなんです。

「職人」とは、卓越した技術を持っている者を指す言葉です。

ただ、塗装職人の場合、「塗る」という行為で、その者の技能を測ることは難しいです。

だって、塗るだけだったら、誰だってできるのですから。

そこで、彼らのアイデンティティは、「速さ」になりました。

速く仕上げられる者、イコール、優れた技能を持つ者、という図式ができあがったのです。

ちなみに、Youtubeで「塗装職人」と検索してみてください。

仕事の速さを競う動画が多いことに気づかされます。

独立して経営者になる夢を持つ塗装職人も少なくありません。

その夢が叶った、職人上がりの経営者の集う場で、こういった会話をよく耳にします。

「うちは1現場●●人工しかかかりませんよ。」

「●●人工以上かけた親方には、もっと少なくするよう厳しく指導しています。」

これは、その経営者が「正しいこと」として話している内容です。

彼ら経営者のモチベーションは、当たり前ですが、会社を大きくすることです。

そのために、経費の削減に取り組むのは、彼らの中では決して間違ってはいないのです。

こういった思考になる一因として、塗装工事の品質の良し悪しがわかるのは、工事が終わってから5年も10年も経ってからだという特異性があることは否めません。

クチコミの評価があまりアテにならないのは、そういった側面があるからです。

弊社の取り組み

弊社は、できる限り情報を開示することをモットーにしています。

ただいま施工中」というコンテンツで、その日に行った作業内容を、その日のうちにアップロードしています。

これを追ってゆけば、実際工事完了まで、どのくらい日数と人員をかけているのか、おおよそ計算できるでしょう。

完了した物件は、「完工事例集」にまとめてあります。

ひとつひとつの物件を丁寧に仕上げてゆくことを会社の方針にしていますので、物件数こそ多くないのですが、それでも、2005年以降、コツコツとアップロードしていった総数が420件ほどになっています。

注:サイト上に掲載していない物件を含めると、私が代表者になった1997年以降、契約ベースで延べ2000件の施工をさせていただいております。たいへんありがたいことです。

1000件以上の施工事例を掲載している業者もあるようですが、弊社のように、420件のすべてにおいて、日記のように、毎日毎日、工程ごとの写真を掲載している会社は、そう多くないと自負しています。

これらをご覧いただければ、弊社が実際に「手間暇」をかけていることがお分かりになられることでしょう。

もちろん、一般的な塗装工事よりも時間がかかる理由も、ご理解いただけるはずです!

見積を比較される皆さんにお願いしたいこと

「見積は3社以上から取りましょう」

ここ近年、我々リフォーム業界において、複数の見積を比較検討することをおすすめする動きが盛んになっています。

そのことについては、私もまったく否定するつもりはありません。

目安がないのに、1社だけの見積では、検討しようもないでしょうから。

ただ、今まで繰り返しお伝えしているように、ほとんどの業者がパンドラの箱の中身を見せたがりません

そこが核心だからです。

ですから、見積を比べる際には、箱の中身を明らかにする必要があります。

皆さんにお願いしたいのは、

「工事期間はどれくらいか」
「延べ作業人員(人工)はどのくらいを予定しているか」

を、ぜひとも質問していただきたいのです。

また、できれば、

「その回答を導き出す根拠(証拠)」

を提示するように依頼するとよいでしょう。

※言っていることとやっていることが違う業者は少なくありません。

依頼する側がエビデンスを持つ

今から、厳しいことを申し上げます。

我々の業界で、不必要な工事・役に立たない工事が横行し、訴訟も絶えないのは、発注者、すなわちお客様のほうにも原因があると、私は感じています。

お客様が、しっかりとしたエビデンスなしに、工事を依頼してしまっているのです。

逆に言えば、エビデンス(根拠)を持つことによって、不必要な工事・役に立たない工事を避けることが可能になるのです。

エビデンスを持つのに、建築の知識などはまったく必要ありません。

生活レベルの経験と、業者の説明に整合性があるかを見極める読解力さえあればよいのです。

私は、外壁塗装のパラダイム・シフトを模索していますが、そのムーブメントを起こすには、依頼する側の意識改革が必要です。

ここまで読み進めていただけた皆さんは、意識を変え、真に確かなものをつかむことができると、私は断言します!

補足:

この記事のトップに載っている画像は、「妻と義母」というタイトルの隠し絵です。

視点を移動させることにより、年ごろの女性にも老婆にも見えるというこの絵を、一度くらいは目にした方が多いのではないでしょうか。

この「妻と義母」は、書籍「7つの習慣」で、パラダイムの概念を簡潔に説明するために引用されています。

パラダイムとは、当然のことと考えられている認識や価値観のことです。

「思い込み」ともいえます。

パラダイム・シフトは、視点を変えることによって、そういった認識や価値観「思い込み」が劇的に変化することをいいます。

「外壁塗装を行わなければならない」という思い込みを、視点を変えることによって、「塗ることに直接的なメリットはない」と思っていただけるように、掲載いたしました。

皆さんのご理解が深まることを、心から願っています。