「塗り替え工事」から「改修工事」へ
弊社では、
「塗り替え工事」
ではなく、
「改修工事」
が大切だと考え、お客様にご提案いたしております。
この考えは、「塗り替え」をご検討のみなさまに、ぜひ知っていただきたいものです。
その理由をお伝えいたします。
なぜ「塗り替え」てはならないのか?
弊社では、年間でおよそ100件の建物調査を行っています。
かれこれ20数年こんなことをしていますので、少なく見積もっても、今までに2000件の建物を見てきたことになります。
そんな弊社が、常々感じているのは、
過去に塗り替え工事を行った建物のほうが、
塗り替えを一度も行っていない建物よりも、
傷みが激しいということです。
ここで言う「劣化」とは、チョーキング(粉化)や色あせといった、見た目のことではありません。
水を含んでふやけていたり、腐っていたりといった、建物の根幹にかかわる劣化のことです。
たとえば、同じ築年数を経過しているお宅であれば、塗り替えを行っているほうが、塗り替えていないお宅より、構造が傷んでいる確率は高いのです。
…こう話しても、多くの方は、私(代表:原田芳一)の言っていることを信じてはくれません。
たしかに、こんな突拍子もない話、簡単には信じられないでしょう。
ですが、これが厳然たる事実なのです。
次の写真をご覧ください。
こちらのお宅は、11年前に一度塗り替え工事をされています。
矢印の箇所に打たれたシーリングは、11年前の工事の際に打ち替え(または新設)されていました。(新築当時から打たれていたかどうかは、残念ながらわかりませんでした)
実はこの場合、水切り板金があるので、矢印の箇所にシーリングを打たなくても、雨水が建物内部に浸入することはありません。
逆に、シーリングを充填したことによって、サイディングの裏側(内側)に発生した結露水、ないしは毛細管現象などで入り込んだ雨水が、逃げ場を失ってしまいます。
そうして雨水がたまり、サイディング小口から吸水されることで、塗膜をはがしてしまっていたのです。
※シーリングとは
シーリング材料、充填材などで塞ぐこと。封をすること。シーリングを打つ=封を打つ、という意味です。
※サイディングとは
建物の外壁に使用する外壁材の一種。建物外壁に張る仕上げ板材のこと。一般的にセメント製や金属製のものが利用されます。
※毛細管現象
細い管状物体の内側の液体が管の中を上昇あるいは下降する物理現象。
つまり、ここにシーリングを打たなければ、サイディングがボロボロになることはなかったのです!
すなわち、
塗り替え工事を行ったから、サイディングがボロボロになった!
と言い換えることができます。
こういった例は、枚挙にいとまがありません。
弊社が一度塗り替えられた建物を調査すると、施工したことによって劣化を進めてしまった箇所に必ず遭遇します。
なぜそんなことになってしまうのか?
それは、塗り替え工事を依頼するお客様、ないしは、塗り替え施工する業者が、こんなイメージを持っているからに他なりません。
「塗膜がだんだんと劣化すると、雨水が壁や屋根に染みこむようになるので、それを防ぐために、定期的に塗装して水をはじくようにしなければならない。」
この考えが誤っているのです!
不具合を直す「改修工事」であるべき
なぜそう断言できるのかといえば、弊社が数多くの物件を見てきた結果、あることに気づいたからです。
それは、建物が、どの部分も同じように劣化しているわけではないということ。さらに、日当たりなどによる劣化の違いも、そもそも根本的な問題ではないということ。
では、なぜ建物が傷んでくるのでしょう?
それは、新築時から建物に潜んでいる「不具合」によってなのです。
この場合の「不具合」は、施工不良という意味ではありません。
(もちろん、いい加減な設計や施工によって、不具合ができる場合もありますが……。)
多くの場合、「不具合」は、特段ひどいつくりではなくとも、どうしても起きてしまうものなのです。
「不具合」は、ふくれやはがれ、ひび割れといった現象として、だんだんと顕在化してゆきます。
ですから、ふくれやはがれ、ひび割れは、不具合でははなく、いわば「劣化現象」と言えます。
不具合とは、その劣化現象の原因となっている「納まり(部材の形状や取り付け方)の不備」のことを指すのです。
先ほどの写真でいえば、塗膜がはがれていることは劣化現象です。その原因は、してはならない箇所へのシーリング施工です。
シーリング施工が「不具合」と言えるでしょう。
ここでわかることとは、
新築時から問題がある箇所が、不具合として現れてくる
という事実です。
あの状態で、はがれた箇所を塗装しても、原因が解消されません。
塗装したものも、すぐにはがれてしまいます。
そこで、原因となっているシーリング材を撤去し、
↓
撤去したままの状態で塗装する
ことが求められるのです。
このように、建物を維持するためには、新築時(または改修時)から存在する不具合を見つけ出し、あるべき姿に変えてあげることが必要なのです。
「新築のように元に戻す」という考えでは、建物を維持させることはできないのです。
このことをして、弊社では、
「塗り替え工事」ではなく、「改修工事」であるべき
だと提唱しています。
改修工事を行う上で必要なのは?
改修工事を行う上では、当然、建物全般にわたる知識が求められます。
特に、雨仕舞の知識は、外装の改修において必須です。
極論かもしれませんが、雨仕舞の知識がない者が現場で塗装工事を行ってはならないと、私たちは考えています。
なぜなら、現場作業でのちょっとしたことでも、雨仕舞の知識が求められるからです。
なんとなく塗ってしまったその塗膜で、雨水の排出が妨げられ、塗装前より腐朽を進めてしまうことだってあるのです。
そういった意味合いからすると、塗装工事ができる人間はとても限られます。「まじめ」「ていねい」「一所懸命」だけではダメですし、塗装職人としての腕がどんなに素晴らしくても、建物を維持する役には立たないのです。
※雨仕舞の知識を有している塗装職人は、残念ながらほとんどいません。それが、現状の外装リフォーム・メンテナンス工事の最大の問題点です。
みなさんは、本当に、自分のお宅に「塗り替え」工事をさせてもよいのですか?