【「塗り替え工事」ではなく「改修工事」であるために】建物調査が最も重要です!(その3) 外壁の調査

原田芳一です。

前回の投稿の続きです。

前回の記事はこちら。

3-2.外壁の調査

次に、外壁などの調査を行います。ここでも、主に注視するのは雨仕舞の不具合です。 下地モルタルのひび割れや、サイディングの目地シーリング材の破断・はがれなども調べますが、内側の防水シートを突破しなければ雨水は構造まで浸入しませんので、重要度はあまり高くありません。

それよりも気にすべきは、既存塗膜がはがれている箇所やふくれている箇所です。塗膜はがれ・ふくれの原因には、直接・間接の違いこそあれ、ほぼ水分が介在しています。ですから、塗膜のはがれ、ふくれ箇所の周辺は、腐食(腐朽)したり、水を吸っている可能性があるということなのです。建物から発している不具合のシグナルを見落としてはなりません。

こちらの建物では、外壁がわずかにふくれていました。こういったちょっとした異変も見逃してはいけません。ふくれの原因には水分が介在している可能性が極めて高いので、この上部を見ないわけにはゆきません。

上部はモルタルがむき出しになっており、ひび割れも起きていました。これでは雨水が浸入してしまいます。しかも、雨水の出口となる下部は塗膜で隠蔽されているため、入った雨水は排出されずに留まります。これでは、構造の腐朽などの危険は高まるばかりです。

このように、こちらの建物では、もともと塗られていた壁を塗り替えることより、この上部(天面・天端)を防水化する必要があります。

この例からも、綿密な調査を行い、適切な仕様を組むことが、建物を維持させる目的の改修工事においては、なによりも重要であることは、ご理解いただけたでしょうか。ただ塗装しても、建物をもたせることにつながらないばかりか、かえって劣化を促進させてしまいます。

そのことからも、建物が発する、ふくれ・はがれなどのシグナルを見逃さないこと、そして、そのシグナルが発生している原因をきちんと究明してゆくことが、非常に大切なのです。