【「塗り替え工事」ではなく「改修工事」であるために】建物調査が最も重要です!(その4) サーモグラフィーカメラによる調査
原田芳一です。
前回の投稿の続きです。
前回の記事はこちら。
3-3.サーモグラフィーカメラによる調査
建物調査においては、サーモグラフィーカメラ(赤外線カメラ)を活用すると、診断の精度が高まります。サーモグラフィーカメラは、温度を測るものだというのは、みなさんご存知でしょう。さらに申し上げれば、対象の表面温度を測ることが可能な計器です。
この画像は、玄関のバルコニー上げ裏(玄関外の天井部分)の様子をサーモグラフィーカメラで撮ったものです。青く表示されている箇所は低温部であり、水分を伴っている可能性があります。
上げ裏材を撤去したところです。低温部として表示されていた箇所には、予想通り水がたまっり、下地材を腐朽させていました。
実は、この住宅の住まい手であるオーナー様は、上げ裏に水がたまっていたことに気づいていませんでした。弊社に依頼したのは、塗り替え工事の見積であり、ゆめゆめそんな箇所に雨水が浸入しているなどとは思わなかったのでしょう。
私は、塗り替えの見積目的の調査においても、サーモグラフィーカメラは持参するようにしています。なぜなら、このようなことが明らかになった際に取り組まなくてはならないのは、 塗装することより、雨水が浸入した原因を突き止め、改善することだからです。
建物の不具合が明らかになれば、お客様のご要望は当然変わります。ですから、お客様のご依頼内容にかかわらず、建物を調べることは、必ず行わなければなりません。
なお、サーモグラフィーカメラでは、雨水が建物に浸入してきた位置を突き止めることは、原則不可能です。先にお伝えしましたとおり、サーモグラフィーカメラは、温度の差を検知する計器です。一方、水は、原則として上から下へと移動します。したがって、水が存在し、低温部として現れるのは、雨水の浸入口ではなく、雨漏りしている箇所の真上や、今回のように、まだ雨漏りしていないものの、天井や上げ裏に雨水がたまっている箇所なのです。
「赤外線カメラで雨漏りを見える化する」と言っている雨漏り診断技術者もいるようです。ただ、上記のとおり、理論上、雨水の浸入位置はほぼわからないはずです。ですから、私は、そういった言い回しに関しては、間違いであるとは言わないまでも、受け取った側に大きな誤解を生じさせる表現であると思っています。