【「塗り替え工事」ではなく「改修工事」であるために】建物調査が最も重要です!(その5) バルコニー(ベランダ)の調査
原田芳一です。
前回の投稿の続きです。
前回の記事はこちら。
3-4.バルコニー(ベランダ)の調査
建築物、特に木造の建物において、もっとも弱点となりえるのは、水のたまりやすい部位です。さらに言えば、空を向いている面は、雨水を受けるので、水がたまりやすいです。
では、建物のどの部位がそれにあてはまるかというと、真っ先にバルコニー(ベランダ)が思い当たります。
(なお、バルコニーとベランダの違いは、庇屋根があればバルコニーで、なければベランダなのだそうです。ですから、住宅では、ほとんどがバルコニーになりますね。)
バルコニーが弱点だということは、みなさんもなんとなくお感じになられていたと思います。弊社にも、バルコニー防水の様子を見てくれという依頼はかなり多くいただいております。
でも、バルコニーの床防水は、案外しっかりしていることが多いです。
実は、それには理由があります。防水層自体は、防水材メーカーから資材とマニュアルが提供されていて、マニュアル通りに施工すれば品質に問題が出ないようになっています。もしそれで問題があるようなら、それはメーカーの責任になってしまいますから、そのような商品を出すことはありません。したがって、防水層が切れてしまったとかめくれてしまったとかいったトラブルを見かけることは、あまり多くないのです。
そこで、私が考える、バルコニーにおける代表的な弱点を2つ挙げます。
サッシと外壁とバルコニー防水との取り合いです。壁と床との関係や、サッシをどの位置に取り付けるかは、設計の問題であり、防水材メーカーや施工者の範疇を超えているのです。この写真のような納まりは、我々実務者からすると、雨漏りのリスクがたいへん高いと直感できるレベルなのですが、そのようになっている責任は、もちろん設計者にあります。したがって、新築当初から雨漏りのリスクを抱えているといっても過言ではありません。
手すり壁(落下防止の袖壁/「腰壁」とも言います)の上端に取り付けられている「笠木」と呼ばれるフタ状の金属部です。この写真のお宅では、笠木上の脚部根元から雨漏りしており、手すり壁内部の木材が腐朽していました。一見すると不具合が起きているようには見えません。それが落とし穴なのです。
2例とも、実際に雨漏りしているお宅の例です。では、もし、これらが雨漏りしていなかったとします。そして、多くの業者が行っているような「塗り替え工事」の見積を依頼したとします。そうした場合、どのような仕様を提案されるでしょうか。
1例目では、単に再防水などを提案してくるでしょうが、納まり、すなわち仕組みに問題があるため、床防水を更新したところで、弱点は解消されません。2例目にいたっては、そもそも見た目の劣化がまったくないので、笠木に対する改修案など、何も提案されないでしょう。
おわかりでしょうか。「塗り替え工事」の視点では、建物を維持するための工事にならないのです。
我々は、「改修工事」の視点から、1例目では、防水そのものを更新するのではなく、弱点である箇所における雨水の流れを変えるご提案を行います。また、2例目では、笠木における雨水が浸入しやすい箇所を踏まえた止水をご提案いたします。
こういった視点でバルコニーを調査することが重要であると、私は考えます。