現場スタッフ(職人)が雨仕舞の知識をもつ重要性

原田芳一です。

今回の記事ですが、本編を読まれる前に、こちらを一読されることをおすすめいたします。

↓ ↓ ↓

現場からの連絡

先ほど、現場から私に連絡が入りました。

「ベランダの手すり壁の内壁は外壁と同じように仕上げるんじゃなくて、透水性をもたせたほうがいいんじゃないですか?」

あれっ、と思って、調査時の写真を確認しました。

こちらが、その箇所の写真です。

基礎知識

まず、前提として、この写真の中で、知識として押さえていただきたいことを挙げます。

●第一に、磁器タイルと目地のモルタルは密着しません。

このことは、建築関係者にも認識されていないことなのですが。

こう考えるとわかりやすいです。

磁器タイルが高級外壁材として用いられている、その最大の理由は、見た目が変わらず、いつまでもキレイであるということかと思います。

では、磁器タイルがいつまでもキレイなのには、主に2つの理由が挙げられます。

1つ目です。

焼き物(無機化合物)であるから、太陽の紫外線に対して影響を受けないことです。

高温によって分子どうしが結合している無機化合物、たとえば お茶碗とか、そもそも岩とか石とかは、色あせなんかしないですよね!

2つ目です。

他の物質を寄せつけないということです。

磁器タイル表面に汚れが付きづらいのは、汚れがくっつきづらいからです。

…だったら、目地モルタルだってくっつきづらいですよね。

そうなんです。

磁器タイルって、イメージとは裏腹に、目地との境目から雨水がしみ込んでいるんです。

●第二に、天面(天端)に関し、原則として継ぎ目は最小限にしなければなりません

こんなのとか、

こんなのとか。

どちらも、タイルの目地ほど継ぎ目はないですよね。

水は原則として上から下へと移動します。

空を向いている面に継ぎ目をつくったら、雨水が浸入してしまいますよね。

だから、継ぎ目はできるだけ少なくする必要があるのです。

したがって、雨仕舞の観点からは、今回施工している物件のような納まりはタブーであり、新築時から問題があったといえます。

現場スタッフ(職人)が雨仕舞を知らなければ

さて、最初の話に戻ります。

この工事の契約では、磁器タイル面は施工せず、塗装仕上げ面は塗り替えることになっています。

バルコニーの天面(天端)は、雨水を呼び込む危険性が高い納まりです。

入った雨水は、この手すり壁の中にとどまります。

そのうち、蒸発するのですが、気化する際に体積は爆発的に増えます(約1700倍)。

もし、この塗装仕上げ面を普通に塗装していったら、手すり壁の中の水分が蒸発する際に、塗った塗膜を押し上げ、膨らませ、最終的に塗膜をはがしてしまう恐れがあります。

だから、スタッフは「このまま塗っていいんですか」と聞いてきたのです。

私が見落としていたというところが最大の反省点ではありますが…

このように、現場スタッフが雨仕舞を知らなければ、塗装によって建物の維持延命を図るなんて、できるわけがないのです。

雨仕舞の知識は、塗装技能士の試験には出てきません。

施工管理士の試験にも出てきません。

建築士の試験にも出てきません。

果たして、雨仕舞の知識がある現場スタッフ、要するに「職人」は、日本中にどれくらいいるのか?

皆さんには想像がつくと思います。

私は、優秀なスタッフに助けられていると、つくづくそう思ったのでした。