【完工事例】[21.12.7]鎌倉市O様邸・雨漏り再現調査(担当:能登広)

物件データ

施工中リポート

散水調査

建物外観

雨漏り診断士の資格所持者が、
疑わしい箇所に水をかけて漏水箇所を特定する「散水調査」を行います。

 

調査①

屋上床南側入隅へ、シャワーヘッドで散水しました。

2021/12/18 8:40~10:10
漏水再現しませんでした。

 

調査②

屋上南側入隅パラペット顎部分へシャワーヘッドで散水しました。

2021/12/18 10:10~11:40
漏水再現しませんでした。

 

調査③

屋上入隅ならびに1m西側までの天窓と外壁との取り合いへ散水しました。

2021/12/18 11:41~11:49
漏水再現(約8分) しました。

 

調査③

1階ギャラリースペース天井へ浸出しました。
(滴下現象あり)
浸出箇所を赤外線で撮影しました。
赤丸の部分が浸出箇所です。

 

調査③

浸出箇所を水分計で計測したところ、45.3%と高い数値となり、濡れていることがわかります。

 

調査④

屋上南側入隅、天窓と外壁との取り合いへ、シャワーヘッドで散水しました。

2021/12/18 12:00~12:58
漏水再現(約58分) しました。

 

調査④

2階リビング南側入隅、窓上部付近より浸出しました。
浸出位置を赤外線で撮影しました。
赤丸の部分が浸出箇所です。

 

調査⑤

屋上南側入隅、天窓上部南側笠木、入隅より約1m幅で散水しました。
(※この時、天窓及び笠木の外側に水が掛からないように養生を行っています。)

2022/12/18 13:10~14:10
漏水再現(約60分) しました。

 

調査⑤

2階リビング南側入隅、窓上部付近より浸出しました。
浸出箇所を赤外線で撮影しました。
赤丸の部分が浸出位置です。

 

調査⑤

この調査の際に、ひび割れ箇所の中央部において、躯体内側より水が浸出していました。
※調査水は外壁表面に流れていません。

 

調査⑥

屋上南側入隅、天窓上部西側笠木へ、約1m幅で散水しました。
(※この時、天窓及び笠木の外側に水が掛からないように養生を行っています。)

2021/12/18 14:50~15:57
漏水再現(約67分) しました。

 

調査⑥

2階リビング南側入隅、窓上部付近より浸出しました。
浸出箇所を赤外線で撮影しました。
赤丸の部分が浸出位置です。

総合所見

雨水浸入位置および浸出位置について

① 屋上南側入隅部、天窓と西側パラペットとの取り合いから浸入し、1階ギャラリースペース天井に浸出しています。
② 屋上南側入隅部、天窓と南面パラペットとの取り合いから浸入し、2階リビング南側窓上部入隅付近より浸出しています。
③ 屋上南側入隅部、南側及び西側笠木より浸入し、②と同じく2階リビング南側窓上部入隅付近より浸出しています。

本件においては、①より、雨水浸入位置・雨水浸出位置ともに1箇所である「単一雨漏り」が、②および③より、雨水浸入位置が複数箇所で雨水浸出位置が1箇所である「複数浸入雨漏り」が確認されました。

 

雨漏りの原因について

鉄筋コンクリート建築物において、雨水浸入位置は主にコンクリート壁面のぜい弱箇所(ひび割れ等)や異種建材接合部の取り合いになります。
本件においても、先に示した雨水浸入位置におけるひび割れや接合部になされているシーリングの破断が原因と推測されます。

 

改修設計について

鉄筋コンクリート建築物では、多くの場合、意図的に雨水を防いでいるのは外皮(建物の外周部分の構造体、すなわち外気に触れる部分)のみです。
したがって、外皮表面の不具合が雨漏りに直結してしまいます。
そのため、改修工法としてまず思い浮かぶのは、原因と推測されるひび割れやシーリング目地に対し補修を行うことです。
ただし、この工法は、新築時の弱点を解消しているわけではないため、経年劣化により、いずれまた雨漏りが再発します。
また、コンクリート壁面に防水系塗膜をかける工法ですが、調査⑤のようにひび割れ箇所から浸入した雨水がひび割れの中間部で再び外部に浸出するような浸水経路となった場合、外皮表面に新たに膜をつくることによって雨水の移動が妨げられるため、その塗膜を膨れさせる恐れがあります。
したがって、この工法で止水することは原則としてお勧めできません。
実施する際には、「雨仕舞(雨水を速やかに外部に排出させる仕組みなどのこと)」に精通している技術者により、水の出口となる位置を塞ぐことのないよう、細心の注意を払っての施工が求められます。
雨漏りを防ぐ仕組みとしては、防水を担う層の外側にすき間をつくり、その表面に外皮構造を設けることが最も有効です。
そうすれば、外皮から浸入した雨水はすき間によって下方へと移動し排出されるからです。
ただし、既存の建築物がそのようになっていない場合には、望まれる仕組みに完璧に移行させることはできません。
そこで、現況においてそういった仕組みにより近づけるために、たとえば既存の外壁の表面に新たな外壁を設けるなど、創造性を持った改修設計が必要になってまいります。